東京 S家|家じまいする家に滲む家族のストーリー

更新日:6 時間前
2026年7月、一軒の古い木造家屋を撮影しました。
今回の撮影は、新しく始めるサービス「家録(いえろく)」のキッカケになったご依頼でした。依頼を受けたときには、ただ取り壊される建物を撮りに行く、そういうつもりで撮影しにいきました。

何でもない風景を、残しておく。
街の中に建つ、年季の入った木造の家。 外観をはじめ、玄関、廊下、台所、階段、庭。 そして、使い込まれた階段の手すりや、壁や床に残る小さな痕跡。 柱に貼られたシール。
家の全体像だけでなく、普段はあまり意識しないような細部にもカメラを向けました。 例えば、毎日何気なく触れていたであろうドアの取っ手。 何度も上り下りしたであろう階段。 見慣れた窓からの景色。
どれも、他の人にとっては特別なものではないかもしれません。
でも、そこで暮らした人にとっては、そんな何でもない風景こそが、かけがえのない思い出につながっているんだと気づきました。

写真には写らないものがある。
撮影した写真を選び、写真集としてまとめました。 建物の姿や細部を、一冊の中に残すことができました。 でも、そこにはまだ足りないものがあると感じています。
例えば、壁についた小さな傷。 写真には、その傷を残すことができます。 けれど、いつ、誰が、どんな出来事でつけた傷なのかは、写真だけではわかりません。 家族にとっては、思わず笑ってしまうような思い出かもしれない。 あるいは、忘れられない出来事があったのかもしれない。 その話を知ることで、何でもなかった一枚が、まったく違う意味を持つこともあるはずです。
家には、記録されていない記憶がある。 今回の撮影を通じて、改めて考えたことです。
家の姿から、家族の時間へ。
今回のS家の記録は、建物の撮影を中心とした最初の試作です。
家の姿。 そこで暮らした人の姿。 日々の暮らしの中に残された痕跡。
そして、家族の言葉。 それらを写真と言葉で編み、一冊の写真集にする。 ただ家を美しく撮影するのではなく、そこにあった家族の時間を残すこと。
それが、家録の目指している記録です。
家を手放す、その前に。
家は、いつか建て替えられたり、誰かの手に渡ったり、取り壊されたりすることがあります。それでも、そこで過ごした時間まで、なくなってしまうわけではありません。 写真を見たとき、忘れていた出来事を思い出す。 家族でページをめくりながら、昔の話が始まる。
そんなきっかけになる一冊を、つくっていきたいと思っています。 家を手放すことと、家族の時間を失うことを、同じにしないために。
家録(いえろく)について
家録は、家じまい・建て替え・解体前の住まいと、そこで過ごした家族の時間を写真と言葉で残すサービスです。 建て替えや実家じまいを予定している方、思い出の詰まった家を記録に残しておきたい方は、お気軽にご相談ください。
株式会社プライメリー代表取締役・フォトグラファー吉野 正悟


